第1話 日本の味噌は、なぜこんなに違うの?

【序章】味噌の国、日本

第1話 日本の味噌は、なぜこんなに違うの?

~大豆・麹・塩は同じなのに~

前回までのブログシリーズ「麹の世界」では、麹菌との出会いから、麹屋の仕事、種麹屋さんとのつながり、そして日本の発酵文化を支えてきた麹についてお話ししてきました。

最終話のタイトルは、

「麹は未来へ」

でした。

麹は、それだけで食べるためだけのものではありません。

味噌になり、醤油になり、甘酒になり、酒になり、酢になり――。

さまざまな発酵食品へ姿を変えながら、私たちの食卓を支えてきました。

では、その「麹の世界」から、次はどこへ向かいましょう。

今回から、一つの発酵食品を追いかけて、日本全国を巡ってみたいと思います。

それが、

「味噌」です。


🌾 花ちゃんの素朴な疑問

日本地図を眺めていた花ちゃんが、こんなことを聞きました。

「ねえ、日本の味噌って、みんな同じじゃないの?」

確かに、基本的な材料だけを見れば、とてもよく似ています。

大豆。

麹。

塩。

ところが、日本各地の味噌を並べてみると驚きます。

白い味噌。

赤い味噌。

淡い山吹色の味噌。

甘い味噌。

しっかり塩味を感じる味噌。

米麹を使う味噌もあれば、麦麹を使う味噌もあります。

そして東海地方には、大豆そのものを麹にした豆麹から作る味噌まであります。

同じ「味噌」という名前なのに、まるで別の食べ物のようです。

花ちゃん、いいところに気がつきました。

実は、ここから今回の旅が始まります。


味噌は大きく3つに分けられる

日本の味噌は、使う麹によって大きく分けると、

米味噌・麦味噌・豆味噌

があります。

米味噌

大豆に米麹を加えて作る味噌です。

北海道、東北、関東、甲信越、北陸、関西など、日本の広い地域で作られています。

しかし同じ米味噌でも、東北の赤くしっかり熟成させた味噌と、京都などの白く甘い味噌では、味も色も大きく違います。

麦味噌

大豆に麦麹を加えて作ります。

四国や九州、中国地方の一部などで親しまれてきました。

麦特有の香りがあり、麹を多く使った甘口の味噌も多く見られます。

豆味噌

主に東海地方に根付いてきた味噌です。

米麹や麦麹ではなく、大豆そのものに麹菌を育てた豆麹を使います。

長期間熟成させるものも多く、濃い色と独特の旨味を持っています。

愛知県などの味噌文化を語るうえでは欠かせない存在です。


でも、麹の違いだけではありません

では、

「米味噌なら、どこで作っても同じ味になるの?」

というと、もちろん違います。

ここが味噌の面白いところです。

味噌の個性を作るものには、

麹の種類
麹の量
塩の量
大豆の種類

仕込み方
熟成期間
温度
そして、その土地の気候

など、さまざまな要素があります。

例えば、麹をたっぷり使えば甘味の強い味噌を作りやすくなります。

熟成期間を長くすれば、色や香り、旨味も変化していきます。

しかし味噌は単純に、

「麹が多い=甘い」
「長く熟成=おいしい」

と決められるものでもありません。

それぞれの土地で、人々が何を食べ、どんな料理に味噌を使ってきたのか。

そこまで見ていく必要があります。


北海道から九州まで、味噌はこんなに違う

日本地図を広げてみましょう。

北海道には北海道味噌。

東北には津軽味噌、秋田味噌、仙台味噌、会津味噌。

長野には信州味噌。

北陸には越後味噌や加賀味噌。

東京には江戸甘味噌。

そして私たちの暮らす静岡には、

「相白味噌(あいじろみそ)」

という味噌文化があります。

さらに西へ進めば、関西白味噌、府中味噌、讃岐味噌、御膳味噌。

九州へ行けば、麦麹をたっぷり使った甘口の麦味噌。

東海地方には豆味噌があります。

こうして見てみると、日本はまさに、

「味噌の国」

なのです。


なぜ、その土地に、その味噌が生まれたのでしょう

今回のシリーズで一番知りたいのは、味噌の商品名や特徴だけではありません。

知りたいのは、

「なぜ?」

です。

なぜ、寒い東北には長く熟成させる味噌が多いのでしょう。

なぜ、米どころには米麹を使った味噌文化が発達したのでしょう。

なぜ、九州では麦味噌が広がったのでしょう。

なぜ、京都ではあれほど甘い白味噌が生まれたのでしょう。

そして、

なぜ静岡には「相白味噌」があるのでしょう。

その答えを探していくと、味噌だけを見ていても分からないことに気づきます。

その土地の農業。

気候。

水。

保存の知恵。

料理。

歴史。

そして、そこで暮らしてきた人たち。

味噌を知ることは、その土地の暮らしを知ることなのです。


麹屋として、もう一度全国の味噌を見てみたい

鈴木こうじ店では、以前ホームページに、

全国味噌づくりMAP

を作りました。

日本各地にはどんな味噌があり、どんな配合で作られているのか。

当時調べたことを、一枚の日本地図にまとめたものです。

あれから長い年月が経ちました。

そして私自身も、麹屋として味噌を作り、味噌作り教室を開き、たくさんの方々と味噌を仕込んできました。

だから今、もう一度あの地図を広げてみたいと思います。

昔作った全国味噌マップを土台にしながら、

「なぜ、この土地に、この味噌が生まれたのか」

という視点を加えて、一つひとつの味噌を訪ねてみます。

そして、作れる味噌は実際に仕込んでみましょう。

麹の量を変えたら?

塩分を変えたら?

熟成期間が違ったら?

同じ材料でも水が違ったら?

麹屋だからこそできる、小さな実験も加えていきたいと思っています。


新しい「全国味噌マップ」を作ろう

今回のシリーズでは、一つの味噌を紹介するたびに、新しい全国味噌マップへ記録していきます。

どんな麹を使うのか。

麹歩合はどのくらいなのか。

塩分は?

熟成期間は?

甘口? 辛口?

どんな料理に使われてきたのか。

そして何より、

「なぜ、その土地で生まれたのか。」

一つずつ調べていけば、最後には今までとは少し違った日本地図が出来上がるはずです。

それは味噌の分布図であると同時に、

日本の発酵文化と暮らしの地図

になるのではないでしょうか。


🌾 花ちゃん、もう一度地図を広げよう

「こんなにたくさんあるんだね!」

そうなんです。

しかも、まだ入口に立ったばかりです。

北へ行けば、寒さの中でじっくり育った味噌があります。

南へ行けば、暖かな土地で育った麦味噌があります。

山を越え、海を渡れば、また違った味噌に出会います。

前のシリーズでは、麹そのものの世界を訪ねました。

今度は、その麹から生まれた味噌を追いかけてみましょう。

さあ、新しい日本地図を広げます。

日本の味噌を、もう一度旅してみよう。


次回予告

【第1章 北国の味噌】

第2話 北海道味噌

~北の大地で育った、すっきり辛口の米味噌~

全国味噌マップ最初の目的地は、北海道。

広大な大地と寒冷な気候の中で、どんな味噌文化が育ってきたのでしょう。

次回から、いよいよ全国の味噌を巡る旅が始まります。


鈴木こうじ店
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