納豆菌さんって、そんなに強いの?
麹の世界 第10話
納豆菌さんって、そんなに強いの?
~発酵界最強!? 麹菌さんとの違い~

「納豆も発酵。味噌も発酵。何が違うの?」
味噌教室で、よくこんな質問をいただきます。
「納豆も発酵食品ですよね?」
「味噌も発酵食品ですよね?」
「だったら、同じ菌が作っているんですか?」
実は、この答えは…
「まったく違う生き物です。」
今日は、日本の発酵文化を支える二人の人気者、
麹菌さんと納豆菌さんをご紹介します。
まずは自己紹介!
発酵界の人気者二人ですが、生物としては全く違う仲間です。
🌸 麹菌さん
麹菌は**カビ(糸状菌)**の仲間です。
細い菌糸を伸ばしながら、お米や麦、大豆の表面でゆっくり育ちます。
その間に、
- アミラーゼ
- プロテアーゼ
などの酵素をたくさん作り、
甘味や旨味を生み出します。
味噌、醤油、日本酒、甘酒、みりん…。
日本の発酵文化には欠かせない存在です。
💪 納豆菌さん
一方、納豆菌は**細菌(バクテリア)**の仲間です。
麹菌のように菌糸を伸ばすことはありません。
細胞分裂を繰り返しながら、ものすごい勢いで増えていきます。
そして、
大豆をネバネバに変え、
強い旨味を生み出します。
納豆菌は、
まさに納豆づくりの主役です。
一番違うのは「強さ」
私がいつも驚くのは、
納豆菌の生命力です。
環境が悪くなると、
納豆菌は**「芽胞(がほう)」**という、とても丈夫な殻を作って眠りにつきます。
この状態になると、
なんと100℃近い熱にも耐え、
乾燥にも負けず、
酸にも強く、
とても長く生き続けることができます。
まさに、
発酵界のサバイバルチャンピオンです。
麹菌さんは少し繊細
それに対して麹菌は、
とても働き者ですが、
少し繊細です。
一番元気なのは、
30~35℃くらい。
温度が高くなりすぎると元気がなくなり、
50~60℃を超えると生きていけません。
だから麹屋では、
温度管理がとても大切なのです。
得意なお仕事も違います
納豆菌は、
タンパク質をどんどん分解し、
ネバネバと濃いうま味を作るのが得意です。
一方、麹菌は、
お米のでんぷんを甘味へ、
大豆のタンパク質を旨味へ変える、
バランスの良い働き者です。
同じ発酵でも、
目指しているゴールは少し違うのです。
実はライバル?
ここまで読むと、
「納豆菌の方が強いなら、麹菌は勝てないの?」
そう思われるかもしれません。
実は…
その通りなのです。
納豆菌はとても強いため、
麹づくりの現場に入り込むと、
麹菌より先に勢いよく増えてしまうことがあります。
だから昔から酒蔵や麹屋では、
仕込みの時期に納豆を食べることを控える職人さんもいました。
もちろん今は衛生管理が進歩していますが、
それほど納豆菌は強い存在なのです。
でも、敵ではありません
ここで大切なのは、
納豆菌は決して悪者ではないということです。
納豆菌がいるから、
おいしい納豆ができます。
麹菌がいるから、
味噌や醤油、日本酒ができます。
どちらも日本の食文化には欠かせない存在です。
違うのは、
活躍する場所だけなのです。
私は、発酵の世界には「良い菌」「悪い菌」というよりも、「それぞれに得意な仕事がある」と考えています。
🌾 麹菌さん VS 💪 納豆菌さん
| 項目 | 🌸 麹菌さん | 💪 納豆菌さん |
|---|---|---|
| 仲間 | カビ(糸状菌) | 細菌(バクテリア) |
| 得意な温度 | 約30~35℃ | 約40~45℃ |
| 性格 | 繊細でコツコツ型 | とてもタフでパワフル |
| 得意なこと | 甘味・旨味を育てる | ネバネバ・旨味を作る |
| 活躍する場所 | 味噌・醤油・甘酒・日本酒 | 納豆 |
まとめ
麹菌と納豆菌。
どちらも日本の発酵文化を支える大切な微生物ですが、
生き物としては全く違う仲間です。
麹菌は、繊細だけれど働き者。
納豆菌は、驚くほどたくましい力持ち。
それぞれの個性があるからこそ、日本にはこんなにも豊かな発酵文化が育まれてきたのです。
🌾 米の花ちゃんのひとこと
「納豆菌さんって、本当に強いんだね!
でも、麹菌さんも納豆菌さんも、日本のおいしい発酵食品を作る大切な仲間なんだ。
みんな違って、みんなすごいね!」
次回予告
麹の世界 第11話
「麹菌さん、大ピンチ! ~納豆菌との知られざる攻防~」
ある春の日。
順調に育っていた麦麹に、突然異変が起こりました。
原因は、温度の上昇と、発酵界最強ともいわれる納豆菌。
35年間の麹づくりの中でも忘れられない「麦麹全滅事件」と、そこから学んだ大切な教訓をお話しします。


