麹菌さん、いよいよ出発!
麹の世界 第6話
麹菌さん、いよいよ出発!
~麹はどんな食べ物に生まれ変わるの?~

「おめでとう。立派な麹になりました。」
約3日間。
麹菌は、お米の中で一生懸命働きました。
菌糸を伸ばし、酵素を作り、真っ白な麹へと育ちました。
出麹(でこうじ)の朝。
麹室いっぱいに広がる甘い香りの中で、私はいつもこう思います。
「今年も、いい麹ができた。」
でも実は、ここはゴールではありません。
麹にとって、本当の仕事はこれから始まるのです。
麹は「主役」ではなく「名脇役」
麹そのものを食べることもありますが、多くの場合、麹は誰かを主役にする存在です。
まるで舞台を支える名脇役のように、自分は目立たなくても、食材の力を引き出していきます。
麹菌が作った酵素は、
お米や大豆、小麦などに働きかけ、
甘味やうま味を引き出し、
日本ならではの発酵食品を生み出していくのです。
最初の旅先は「味噌」

完成した米麹は、蒸した大豆と塩に出会います。
ここから長い熟成が始まります。
麹の酵素が大豆のたんぱく質をゆっくり分解し、
うま味豊かなアミノ酸へと変えていきます。
数か月から一年以上。
時間をかけて、おいしい味噌が育っていくのです。
甘酒では甘さの魔法使い

甘酒では、大豆は登場しません。
麹は、お米のでんぷんをブドウ糖へと変えていきます。
砂糖を加えなくても甘くなるのは、
麹菌が作ったアミラーゼという酵素のおかげです。
だから甘酒は、
「飲む点滴」
と呼ばれるほど、自然の甘さと栄養を持っています。
塩こうじは万能調味料へ

麹と塩、水を合わせると、塩こうじになります。
酵素は生きたまま働き続け、
肉や魚をやわらかくし、
野菜の甘味まで引き出してくれます。
家庭料理の名脇役として、多くの台所で活躍しています。
醤油では小麦と大豆をつなぐ
醤油づくりでは、
大豆だけではありません。
炒った小麦も加わります。
麹は、大豆のうま味と小麦の香ばしさを引き出しながら、
一年以上かけて、日本人に欠かせない調味料へと育っていきます。
酒蔵では力持ちに変身
同じ麹菌でも、日本酒づくりでは少し役割が変わります。
酒蔵では、お米の中までしっかり菌糸を伸ばし、
たくさんのでんぷんを糖へ変えていきます。
その糖を酵母がアルコールへ変えることで、日本酒が生まれます。
以前ご紹介したように、
酒蔵の麹は「力持ち」。
麹屋の麹とは少し違った個性を持っています。
一つの麹が、たくさんの未来をつくる
完成した麹は、
味噌にも、
甘酒にも、
塩こうじにも、
醤油にも、
日本酒にも、
みりんにも、
姿を変えていきます。
同じ麹でも、出会う相手によって未来が変わるのです。
まるで子どもたちが、それぞれの夢に向かって旅立つようですね。
麹屋として一番うれしいこと
私が35年間麹を作り続けてきて、一番うれしいのは、
「おいしい味噌ができました。」
「甘酒がとても甘く仕上がりました。」
そんなお客様の声を聞くことです。
麹は、自分だけでは完成しません。
使ってくださる皆さんがいて、初めて本当の役目を果たします。
だから私は、麹を送り出すたびに、
「おいしい発酵食品になって帰っておいで。」
そんな気持ちで見送っています。
まとめ
約3日間かけて育った麹。
でも、それは終わりではありません。
麹はこれから、
味噌、甘酒、塩こうじ、醤油、日本酒、みりんなど、
日本の食文化を支えるさまざまな発酵食品へと生まれ変わります。
小さな麹菌が育てた一粒一粒の麹は、
たくさんの食卓に笑顔とおいしさを届けるため、今日も新しい旅へ出発しているのです。
🌾 米の花ちゃんのひとこと
「麹さんは、ゴールじゃなかったんだね!
味噌や甘酒、お醤油、日本酒…。
みんなのおいしさを支えるために、これから旅に出るんだね!」
次回予告
麹の世界 第7話
「麹菌さん、相棒ができた! ~酵母と乳酸菌との発酵リレー~」
麹菌だけでは、味噌や日本酒は完成しません。
そこへ登場するのが、酵母や乳酸菌という頼もしい仲間たちです。
次回は、発酵を支える微生物たちがどのようにバトンをつなぎ、おいしさを育てていくのかをご紹介します。

