麹菌さん、変身中!

麹の世界 第5話

麹菌さん、変身中!

~白い花が咲く3日間~


「昨日までお米だったのに…」

麹室へ入ると、ふわっと甘い香りが漂います。

昨日まで、そこに並んでいたのは、ただの蒸したお米でした。

しかし、今日は少し様子が違います。

お米の表面には、うっすらと白いものが見え始めています。

まるで雪が降り積もったようにも見えます。

この白い姿こそ、

麹菌がお米の上で元気に育っている証拠です。

私はこの瞬間が、何年経っても一番好きです。


麹菌は、お米の中を旅しています

多くの方は、

「麹はお米の表面だけ白くなる」

と思われています。

実は違います。

麹菌は表面だけではなく、

少しずつお米の中へ菌糸を伸ばしています。

まるで木の根が土の中へ広がるように、

細い菌糸がお米全体へ伸びていくのです。

この菌糸が、お米のでんぷんやたんぱく質へ働きかけ、

たくさんの酵素を作り始めます。

つまり、

白い麹は、

「元気に仕事をしている証」

なのです。


白い花が咲いたように見える理由

完成した麹を見ると、

白い毛がふんわりと生えています。

昔の人は、この姿を見て

「米に花が咲いた」

と表現しました。

そこから

「米の花」

という美しい呼び名も生まれました。

鈴木こうじ店のキャラクター

「米の花ちゃん」

も、この言葉から生まれています。

昔の人の感性は、本当に素敵ですね。

見えない菌を「花」にたとえたのですから。


毎日、少しずつ表情が変わる

種付けをしてから約3日。

麹は少しずつ成長します。

1日目

まだ白さは少なく、

静かに眠っているようです。


2日目

菌糸が勢いよく伸び始めます。

温度も上がり、

香りも少し甘くなります。

麹菌が一番元気な時間です。


3日目

お米全体が真っ白になり、

ふんわりした麹が完成します。

この姿を見ると、

「今年もいい麹になった。」

と、ほっとします。


同じ麹は二度とできない

35年間麹を作ってきて思うことがあります。

それは、

「まったく同じ麹は、一度もできたことがない。」

ということです。

気温。

湿度。

お米の出来。

吸水。

蒸し加減。

その年のお米の個性。

すべてが少しずつ違います。

だから麹も、

毎回少しだけ違う表情を見せます。

そこが、麹づくりの難しさであり、

面白さでもあります。


麹屋が一番うれしい瞬間

出麹(でこうじ)の朝。

麹室の扉を開ける瞬間は、

今でも少し緊張します。

ふわっと広がる甘い香り。

真っ白になった麹。

手に取ると、

ふんわりとした温かさがあります。

「ありがとう。」

私は毎回、そんな気持ちになります。

麹は作るものではなく、

育てるもの。

その言葉を一番実感する瞬間です。


小さな菌が、大きな未来をつくる

この白い麹は、

ここから、

味噌になり、

甘酒になり、

塩こうじになり、

醤油になり、

日本酒になり、

みりんになり、

日本の食文化を支えていきます。

すべては、

この小さな白い花から始まるのです。


まとめ

麹菌は約3日間かけて、お米の中へ菌糸を伸ばし、たくさんの酵素を作ります。

そして、お米は「蒸米」から「麹」へと姿を変えます。

その白い姿は、昔の人が「米の花」と呼んだように、命が咲いた証でもあります。

私たち麹屋は、その小さな花が美しく咲くように、今日も麹菌と向き合っています。


🌾 米の花ちゃんのひとこと

「麹って、お米に咲いた白い花だったんだね!

私の名前『米の花ちゃん』にも、こんな素敵な意味があったなんて、とってもうれしいな!」


次回予告

麹の世界 第6話

「麹菌さん、いよいよ出発! ~麹はどんな食べ物に生まれ変わるの?~」

3日間かけて立派に育った麹。

でも、麹はまだゴールではありません。

ここから味噌、甘酒、塩こうじ、醤油、日本酒など、さまざまな発酵食品へと姿を変えていきます。

次回は、**「麹が未来の食べ物へと旅立つ物語」**を、米の花ちゃんと一緒にたどっていきましょう。

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