種麹屋さんとの出会い ~麹菌はどこからやって来るの?~
麹の世界 第2章
種麹屋さんとの出会い
~麹菌はどこからやって来るの?~

はじめに
「麹って、お米に自然と生えてくるんですか?」
味噌教室や発酵講座で、この質問をいただくことがよくあります。
確かに昔は、「麹室(こうじむろ)には麹菌が住み着いている」と考えられていた時代もありました。
しかし現在、私たち麹屋が麹を作るときには、**「種麹(たねこうじ)」**という特別な麹菌を使います。
今回は、その種麹を作る、日本の発酵文化を陰で支えている職人たちのお話です。
麹菌は自然界にはたくさんいる?
実は、麹菌の仲間は自然界にも存在します。
しかし、そのままでは味噌や醤油、日本酒づくりに使えるわけではありません。
自然界には、
- 雑菌
- 青カビ
- 黒カビ
- 納豆菌
- 酵母
など、たくさんの微生物が暮らしています。
その中で、安全で発酵に適した麹菌だけを選び、代々大切に守り続けてきたのが種麹屋さんなのです。
日本に数えるほどしかない「種麹屋」
皆さんは「種麹屋」という職業をご存じでしょうか。
実は日本全国でも、その数はごくわずかです。
味噌屋さんや醤油蔵、日本酒の蔵元、そして私たち麹屋へ、品質の高い麹菌を届けています。
いわば、
「発酵文化の種を守る人」
それが種麹屋さんです。
私が教わったこと
私は35年間麹を作り続けてきました。
その中で、多くのことを教えていただいたのが種麹屋さんです。
例えば、
「今年のお米は少し硬いですね。」
「今年の夏は気温が高いので、温度管理に気を付けてください。」
「この菌株なら、もう少し白くきれいな麹になりますよ。」
そんな何気ない会話の一つひとつが、私たち麹屋にとっては貴重な学びでした。
一緒に育てた”鈴木こうじ店の麹”
以前、麦麹が思うように育たず、すべて廃棄せざるを得ない出来事がありました。
原因は、気温の上昇による温度管理の難しさでした。
そのことを種麹屋さんへ相談すると、
「この菌株を試してみませんか。」
と、新しい麹菌を紹介してくださいました。
さらに、
- 麹菌が最も元気に育つ温度
- 納豆菌が増えやすい温度帯
- 季節ごとの管理方法
まで丁寧に教えてくださいました。
私は改めて感じました。
麹は、一人では作れない。
種麹屋さんとの信頼関係があってこそ、より良い麹が育つのだと。
鈴木こうじ店だけの麹へ
現在、鈴木こうじ店では、
長年相談を重ねながら、
- 長白菌
- 雪こまち
という菌株を組み合わせています。
長白菌は、ふんわりと白く美しい菌糸を育てるのが得意。
雪こまちは、お米の中までしっかり菌糸が入り込み、力強い麹を育てます。
どちらか一方ではなく、それぞれの長所を活かした鈴木こうじ店ならではの麹づくりを続けています。
発酵文化は「人」と「人」で受け継がれる
味噌や醤油、日本酒を支えているのは麹菌です。
しかし、その麹菌を守り育てているのは、人です。
種麹屋さん。
麹屋。
酒蔵。
味噌蔵。
醤油蔵。
それぞれが長年の経験や知恵を受け継ぎながら、日本の発酵文化を未来へつないでいます。
麹づくりは、菌だけではなく、人と人との信頼によって支えられている仕事なのです。
まとめ
普段、皆さんが手に取る麹の裏側には、名前が表に出ることの少ない種麹屋さんの存在があります。
品質の良い麹菌を守り続けること。
時代や気候の変化に合わせて菌株を研究すること。
そして、全国の麹屋や酒蔵とともに、日本の発酵文化を支えていること。
その積み重ねが、今日の美味しい味噌や醤油、日本酒へとつながっています。

