同じ菌なのに、なぜ別物の麹になるの?

~麹屋の麹と酒蔵の麹~

前回は、日本の発酵文化を支える「種麹屋さん」のお仕事をご紹介しました。

今回は、その続きのお話です。

毎年、種麹屋さんが鈴木こうじ店へ営業に来られると、新しい菌の話や全国の麹屋さん、酒蔵さんの情報など、いろいろなお話を聞かせてくださいます。

ある日、こんな話をしてくださいました。

「鈴木さん、麹屋さんが使う種麹と酒蔵さんが使う種麹は、実は同じ菌なんですよ。」

私は少し驚きました。

「えっ、同じ菌なんですか?」

すると営業の方は笑いながら続けました。

「はい。でも出来上がる麹は全然違います。」

この言葉が、とても印象に残っています。


同じ種麹なのに、なぜ違う麹になるのでしょう?

答えは、とてもシンプルです。

『目指しているものが違うから』

なのです。

麹屋は、

味噌、甘酒、塩麹、醤油麹など、

麹そのものを商品として販売します。

だから見た目も大切です。

一方、酒蔵は麹を販売しません。

麹は美味しい日本酒を造るための途中工程。

つまり目的が違うのです。


麹屋が目指す麹

麹屋が理想とする麹は、

見た瞬間に

「きれい!」

と思える麹です。

真っ白に菌糸が伸び、

ふんわりと毛皮をまとったような美しい麹。

もちろん見た目だけではありません。

酵素力も十分にあり、

味噌や甘酒づくりに適した麹であることも重要です。

鈴木こうじ店では、

長白菌の美しい白さと長い菌糸。

さらに白麹雪こまちの米への食い込みの良さ。

その二つを生かした独自の種麹を使い、

「美しく、そして力強い麹」

を目指しています。


酒蔵が目指す麹

一方、酒蔵では考え方が違います。

見た目よりも、

麹菌が米の内部までしっかり入り込み、

強い酵素を作ることが最優先になります。

外側はそれほど白く見えなくても、

米の中では菌糸がしっかり伸びています。

その力強い酵素が、

お米のデンプンを糖へ変え、

美味しい日本酒を生み出していくのです。

酒蔵では

「見えないところで働く麹」

が理想なのです。


同じ菌でも育て方が違う

ここが一番面白いところです。

使っている麹菌は同じ。

しかし、

・温度管理

・湿度管理

・切り返しのタイミング

・盛り込み方法

・出麹の時間

こうした製麹方法を変えることで、

全く違う麹になります。

人間でいえば、

同じ子どもでも、

育つ環境によって個性が変わるのと少し似ています。

麹菌も、

職人の育て方によって、

その力を発揮する方向が変わるのです。


種麹屋さんだから知っていること

全国の麹屋さんや酒蔵さんを訪ね歩く種麹屋さんだからこそ、

それぞれの麹づくりの違いを知っています。

そして、

「酒蔵ではこんな麹が求められています。」

「麹屋さんではこちらの菌が人気ですよ。」

そんな情報を教えてくださいます。

種麹屋さんは、

菌を届けるだけではなく、

日本の発酵文化をつなぐ案内人でもあるのです。


まとめ

同じ麹菌を使っていても、

麹屋と酒蔵では目指すゴールが違います。

だから出来上がる麹も全く違います。

美しさを追求する麹。

力強さを追求する麹。

どちらも日本の発酵文化には欠かせない、大切な麹です。

職人は麹菌を育てるのではなく、

「麹菌の力をどう引き出すか」

を毎日考えながら麹づくりをしています。

そこに、麹づくりの奥深さがあるのです。

いよいよ新シリーズ

「麹の世界」が始まります。

発酵のある暮らしでは、

  • 発酵とは?
  • 麹とは?
  • 麹屋の仕事
  • 麹の歴史
  • 種麹屋さん
  • 麹の作り方
  • 麹屋と酒蔵の麹の違い

など、「麹の入口」をご紹介してきました。

次回からは、いよいよ**「麹の世界」**へ。

麹菌の働きや酵素の力、米麹・麦麹・豆麹の違い、そして麹が味噌・醤油・酒・みりんへと姿を変えていく仕組みを、麹屋ならではの視点で、さらに深く、わかりやすくお届けします。

麹を知ると、日本の発酵文化がもっと面白くなります。

どうぞお楽しみに。

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