麹屋さんのお仕事
麹屋さんのお仕事

前回までの「発酵のある暮らし」では、
- 発酵とは何か
- 発酵と腐敗の違い
- 麹とは何か
- 麹はどうやって作るのか
について学んできました。
今回は、その麹を実際に作っている人たちのお話です。
皆さんは「麹屋さん」と聞いて、どんな仕事をしている人を思い浮かべるでしょうか。
実は麹屋さんは、お米や麦、大豆を使って麹を育てる職人です。
味噌、醤油、日本酒、甘酒、塩こうじ、しょうゆ麹。
日本の発酵食品の多くは、麹なしでは作ることができません。
つまり麹屋さんは、日本の発酵文化を支える縁の下の力持ちなのです。

麹屋の一日は朝早くから始まる
麹づくりは時間との勝負です。
お米を洗い、浸漬し、蒸し上げる。
蒸し上がったお米は熱すぎても冷たすぎてもいけません。
麹菌が元気に育つ温度まで冷まし、種麹をふりかけます。
ここから麹づくりが始まります。
麹菌は目には見えない小さな微生物ですが、生きています。
だから麹屋さんは、まるで赤ちゃんを育てるように麹と向き合います。
温度を見るのが仕事
麹づくりで最も大切なのは温度管理です。
麹菌は発酵する時に熱を出します。
温度が上がり過ぎると菌が弱り、低すぎると元気に育ちません。
そのため麹屋さんは何度も温度を測り、麹の様子を確認します。
昔は温度計も今ほど正確ではありませんでした。
職人たちは手で触れたり、香りを確かめたりしながら麹の状態を判断していました。
長年の経験によって培われた感覚は、今でも麹づくりに生かされています。
夜も眠れない仕事
麹菌は昼も夜も休まず働きます。
当然、麹屋さんも夜中に工房へ向かうことがあります。
深夜に温度を確認し、必要であれば麹を混ぜたり、広げたりします。
特に出麹(でこうじ)と呼ばれる完成直前は重要な時間です。
工房いっぱいに甘く栗のような香りが広がり、麹菌が元気に育っていることを教えてくれます。
夜中の静かな工房で麹と向き合う時間は、麹屋にとって特別な時間でもあります。
昭和時代の鈴木こうじ店

今回掲載している店舗の写真は、昭和時代の鈴木こうじ店です。
現在のお店は改装され、より多くの方に発酵を楽しんでいただける空間になりました。
しかし、その前は昔ながらの木造の麹屋でした。
店の奥では麹が育ち、工房には蒸気が立ち上り、天井や柱には長年住み続けた麹菌たちの気配がありました。
代々受け継がれてきた麹づくりの技術は、建物の姿が変わっても変わることはありません。
鈴木こうじ店は創業百五十余年。
六代にわたり麹づくりを続けてきました。
時代が変わっても、「良い麹を作る」という想いは受け継がれています。
麹屋は発酵文化のスタート地点
味噌屋さんも、醤油屋さんも、酒蔵さんも。
まずは麹から始まります。
麹がなければ味噌も醤油も日本酒も生まれません。
私たちが当たり前のように食べている発酵食品の多くは、麹屋から始まっているのです。
麹屋の仕事は決して派手ではありません。
しかし日本の食文化を支える、とても大切な仕事です。
皆さんが味噌汁を飲む時、甘酒を楽しむ時、醤油を使う時。
その奥には、麹を育てる職人たちの仕事があることを少し思い出していただけたら嬉しく思います。
次回予告
【導入編 第6回】
「こうじ屋の歴史」
麹屋さんはいつ生まれたのでしょうか?
奈良時代から続く麹の歴史をたどりながら、日本の発酵文化のルーツを探ってみましょう。

